僕からの贈り物

二週間に及ぶドラムレッスンもあと二日。安室ちゃんのLove Storyを真剣に練習している。彼は始めのころと比べて取りむ姿勢も少しずつ良くなってきた。始めは遅刻もしてくるし、謝らないししょうがない奴だと思っていたが今ではそんなこともない。今日はまた遅れてきたがあと残り僅かなので残って待っていることにした。3分が経過後、電話が来て、今どこ?と。こっちはずっと練習会場で待っとるわ、はよこいや。と伝え10分後に父親とバイクで到着した。父親はナマステをしてきたからまだよい。K君は何も言わず会場へ向かおうとしたのでちょっとまてーい、何で遅れた?と聞くと朝から父親とパーティーへ行っていて遅れたと。知らんがな。まず、謝ろね、そうしないと未来はないよ。ってきつめに言った。時間に遅れるドラマーはどうだろう。かつては僕も遅刻を良くしていたのでよく分かるが、時間にルーズなドラマーのビートに誰が乗りたいか。僕は乗りたくないし、まずバンドメンバーからの信用を失うと曲中ものり辛くなってしまうし、周りも気持ち悪くさせてしまう。これを思うと昔は舐めてたなぁとしみじみ思う。反省。そんな事を思いながらK君にはそうなって欲しくないのでそう伝えた。K君には伝わってくれるだろう。そんなK君だったが今日は違った。いつもテンポ70でシングル、ダブル、三連、16分のチェンジアップをしているのだが、今日はテンポ80にして開始してみたのだが、それにも関わらずそうだった。でもやはり疲れる。仕方ない。その時に今日は彼の見た夢の話に。昨日の夢は彼と彼のお母さんと、父と学校の先生となぜか僕が出てきて、香港のディズニーランドで木を切っている夢だったのだそうだ。そしてそのステージで僕とK君と友達が一緒に演奏しているとのこと。でも彼自身は木を切っていることが分からなかったが、スタッフに怒られてそこで目が覚めたという。彼のお母さんはこの世界にはもういないが、夢には出てきた。これが何を意味するかわ分からないが夢の中で彼の家族と一緒にいれたこと、そして同じステージに立てた事。お母さんも出てきたこと、この大事な人たちの中に彼の夢の世界が入る事を許してくれたと思うと、すこし嬉しかった。僕は彼に言った。彼はとても愛がある。若干13歳にして色々なことを考えさせる運命をたどってきた。それ故僕の13歳とは異なる視点を持っている。しかし、ドラムを頑張っていることは同じ。どこの世界にいても一つの事を頑張って続けていれば未来は切り開いていけるし、自分の中に楽園を作ることができる。そして彼のお母さんの魂はK君の事をずっと近くで見ていてくれる。彼にはそう伝えた。彼も深くうなずいた。魂は消えない。ずっと近くにいてくれる。だから寂しくはない。それだけに今この与えられたこの人間としての今生をよりはっきりと意識をもって生きていきたいものだ。色々なことが重なって今に至る。人は思いもよらないところからいきなり人生が変わることがある。でもいつだってどんな時だって人に優しく、自分の信念を曲げずに生きていればその人は大丈夫。周りの幸せを願える人は願えばいい。人の幸せさえ壊さなければいい。少なくとも与えられた時間は限られている中で、自分が何が出来て何をしたいのか、その為には何をすればいいのか真剣に考えて、ドラムの練習に打ち込むだけなんだ。K君の未来にドラムが大きくかかわってくるかはわからない。誰の人生だって変えられないんだから。だけど、いま、人生の中でたった二週間だけ交わった中で、僕が君に出来ることを真剣に考えている。僕からの贈り物は時間と、8ビートなんだよ。